
研究について
研究背景

図1 太陽光発電イメージ図
太陽光発電システム
太陽光発電システムは、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出せずに発電でき、クリーンエネルギーとして注目されている発電システムです。また、家に簡単に設置でき、電力の売買も可能であるので太陽光パネルを取り入れている家庭をよく見かけます。
しかし、そんな太陽光発電システムには「天候によって発電量が変化する」という特徴があります。天気が雨や曇り、雪などのときは太陽の光が届きにくいため発電量は少なくなり、晴れのときならば発電量は多くなります。
では、発電量が不安定だと何が問題であるのでしょうか。結論としては電力の需要と供給のバランスが乱れてしまうことがあげられます。そのバランスを崩さないようにするには、リアルタイムでの日射量の変動量の把握をし、発電量を予測することが重要です。では、その日射量を得るためにはどうすれば良いのでしょうか。

図2 小型日射計

図3 需要と供給のバランスの図
日射量を得るためには
日射量を得る方法としては、宇宙からと地上からとの二つがあげられます。
宇宙からは衛星画像により日射量を得られます。特徴としては広範囲で日射量を把握することが可能で、数分オーダーでの観測ができます。また、衛星画像は雲による影響や建物からの反射や影などの影響があるため地上に届く日射量を把握することが困難であるのも特徴です。
地上からは日射計により日射量を得ることができます。日射計は地上より、数秒オーダーで観測できるため衛星画像より正確に日射量の把握ができますが、観測範囲が衛星と比べると狭くなります。また、気象庁が所有している地上観測所があり、これも日射計から日射量を得ています。しかし、地上観測所は全国に約60か所しかないため、地上観測所から近い(2km以内の)地域は観測できますが、地上観測所から離れている地域だと正確に日射量の把握ができない場合があります。そこで、離れた地域でも日射量を把握するために日射計を設置する必要がありますが、日射計は高コストであり大量導入は難しいです。
そのため、先行研究では低コストで精度よく日射量を把握できるように、太陽光発電モジュール(以下、PVモジュール)を日射計として利用することが提案されました。
PVモジュールから日射量を得るために...
短絡電流と開放電圧
日射量を知るためには短絡電流と開放電圧を測定する必要があります。では、短絡電流と開放電圧とは何なのか、右図に示します。
短絡電流は外部にかかる電圧が0Vであるときに流れる電流です。短絡とはとても小さい抵抗(導線や値の小さい抵抗)などに電流が流れることを言います。
開放電圧は外部に流れる電流が0Aであるときの電圧です。開放とは出力端子に何もつないでいない状態のことを言います。
これらを測定して得ることにより、日射量を得ることができます。

図4 短絡のイメージ図
図5 開放のイメージ図
発電量予測に重要な日射量
一般に設置されているPVモジュールは、図6のように傾斜をつけて設置しているものがほとんどです。しかし、発電量を予測するためには水平面が受ける日射量である水平面全天日射量が重要となってきます。そのため、傾斜をつけて設置されているPVモジュールから得られる斜面全天日射量から水平面全天日射量に変換させることが必要になります。

図6 斜面全天日射量と水平面全天日射量
研究目的
前述したように、発電量を予測する際に必要、重要となってくる日射量は水平面全天日射量です。その水平面全天日射量を得るためには斜面全天日射量より算出する必要があり、算出するためには直散分離法という方法を使って算出します。直散分離法とは、以下の図のように水平面全天日射量を太陽から直接地表に届く「直達日射量」、雲やちりなどによって散乱して届く「散乱日射量」に分離して斜面全天日射量を算出する方法です。
私の研究では、直散分離法を逆モデルとして斜面全天日射量から水平面全天日射量を算出するという方法で推定を行っています。その直散分離法の計算モデルは多く存在するため、様々な種類の直散分離モデルを応用して斜面全天日射量から水平面全天日射量を推定するプログラムを構築し、精度の比較をしています。

図7 直散分離のイメージ図
参考資料
[1]局地モデルから出力される日射量予測とその予測精度の検証 大竹秀明・高島工・大園崇・Joao Gari da Silva Fonseca Jr・山田芳則 Journal of Japan Society of Energy and Resource,Vol.36,No.4
[2]太陽電池の分類:AIST太陽光発電技術開発(https://unit.aist.go.jp/rpd-envene/PV/ja/about_pv/types/groups2.html)